Sunday 19 June 2011

obsession

英語に'obsessed'という言葉があって、日本語に訳すと「取り付かれている」ってな感じだろうか。

'They are obsessed with collecting'

そんな言葉がピッタリの夫婦をドキュメントした映画「ハーブ&ドロシー」を、東京都写真美術館で見た。
http://www.herbanddorothy.com/jp/index.html

夫(ハーブ)は郵便局職員、妻(ドロシー)は図書館司書。

ニューヨークに住む、夫婦揃って慎ましい職業に就く彼らは、生活費以外のお金を全て、現代アート作品の収集に費やす。

その数、数千点。

ついに、自宅のアパートに収納出来なくなったため、作品をアメリカ国立美術館に寄贈する。

彼らが少しでも「まともな」生活を送れるようにと、美術館側はお礼を贈呈するが、そのお金で彼らは新たなアート作品を買ってしまう。

そう、彼らを表すには、'obsessed'ほど適当な言葉は無いようにすら思える。



郵便局で働くハーブの元同僚が、彼をこう表現していたのが面白かった。

「物静かでシャイな男だったよ。彼がアート界では有名なコレクターであることなんて、誰も知らなかった。」

Sunday 12 June 2011

kore-eda

映画を見ることはそれなりに好きなのだけれども、見ることが目的にならないように気を付けている。

仕事ではなく、あくまで楽しみなのだから、興味のある映画を週に1本でも見られれば、それで十分だと思っている。

そんなスタンスなので、当然のことながら、いままで見たことの無い名作は山ほどあり、言わずもがな、見たことの無い駄作映画は無数にある。


いつの頃からか、映画を選ぶ基準として、テーマや出演者に加え、監督の名前が加わるようになった。

とは言っても、作品が公開されるたびにチェックする監督は数人しかいない。

そのうちの一人、是枝監督の「奇跡」を、吉祥寺のバウス・シアターで見た。


古き良き日本映画を思わせるようなデビュー作「幻の光」を見たのは、高校生の頃だったか。

死を迎える人々に対し、「人生の中で、最も素晴らしい体験」を聞き、その状況を再現することで死者を送り出す、というユニークな設定の施設を描いた作品「ワンダフル・ライフ」。

そして、異様なまでに哀しく、異様なまでに美しい「誰も知らない」。

彼の作品の何が僕を惹きつけるのか、明確な理由は分からない。

けれども、彼の映画作りに対する真摯な姿勢が、僕の心を動かし続けることは確かだ。


「奇跡」は、ストーリーだけを評価するのであれば、名作とは言えないのかもしれない。

けれども、僕は映画を見ながら何回も笑って、たまに悲しくなって、そして最後は気持ちが晴れやかになった。

そう、この作品には、映画を見る醍醐味が詰まっているような気がする。

http://kiseki.gaga.ne.jp/

Thursday 9 June 2011

a depth of a man

人間の本質や本性は、いくら他人や本人が分かったつもりになっていても、本当のところは分からないものではないだろうか。

予期せぬ困難に出会ったとき、自分ではよく知っていると思っていた相手が、思いがけない行動に出る、なんてことは十分に起こり得る。

だから、人間の本当の「器」なんてものは、なかなか推し量ることが出来ない。

けれども、他人からどう言われようとも、自分の頭で考え、自分のキャパシティーを広げようとしている人間に対して、僕は親近感を持つし、僕自身もそんな人間でありたいと思っている。



ブラジル、ベルギー、セルビア、アメリカ。

年収や安定には見向きもせず、「ここではないどこか」を探して彷徨い続ける彼の情報を目にするたび、何とも表現し難い感情が、僕の心をうずいた。

ひょっとして彼は、「死に場所」をさがしているんじゃないか。

いつの頃からか、僕はそう思うようになった。

そして彼は、「死に場所」として、故郷のクラブ・チームを選んだ。



35歳になった彼の顔には、自分の頭で考え、行動してきた深みが出てきたように思えてならない。

たとえ、僕が彼の本質を知ることは出来ずとも。

http://number.bunshun.jp/articles/-/12503

http://www.mito-hollyhock.net/www/news/index.cgi?no=756