Friday 23 September 2011

おすぎ



その昔、テレビの映画プログラムで長いことプレゼンターをやっていたヨドガワ先生が、こんなことを言っていた。

『紹介する映画が、何も語るに値しない場合だってある。そんな時は、「あのシーンが素晴らしかった」とか、「あの俳優のこんな仕草が良かった」などと、何でもいいから褒められるものを探す』と。


日本の大手メディアによる映画評、音楽評を読んだり聞いたりしても、皆本当のことを記さないので、参考にならないことが多い。

例えば映画業界なんかは、一種のコミュニティが出来上がっている。

試写会には、毎回同じ評論家、業界関係者などが集まる。

当然、人間関係が少なからず形成されるので、評論家の人たちも、いつもお世話になっている人たちが携わっている映画の悪口は書けない。

そして、そんな状況を理解し始めた読者やリスナーは、評論家・専門家と呼ばれる人間たちを信用しなくなる。

全く持って悪循環。



そんな狭い業界にいるにもかかわらず、テレビ・タレントとしても名をはせるあの方は、作品をはっきりとこき下ろす。

そんなあの方が、「今年No.1! 見逃したら一生損する」

と語ったらしい、ロマン・ポランスキー監督の「ゴースト・ライター」を見た。



いやはや、見逃したら一生損するとは思わんが、よく出来た作品であった。

それにしても、ユアン・マクレガーは、米国人よりも英国人役の方がしっくりくる。

彼のブリティッシュ・アクセントを久しぶりに聞けたことも満足でした。

「今年No.1! 見逃しても損はしないけど、ユアン・マクレガー好きにはたまらない作品」

http://ghost-writer.jp/

Tuesday 20 September 2011

fairness



バンクーバーに住む人の多くはフレンドリーだと思う。

ただ、皆が皆、オープン・マインドで、明るくて陽気な人か、と言われると、そうではない。

ラテン・アメリカの人々なんかが醸し出す底抜けの陽気さは、カナダ人にはない。


陽気さが、その場を一瞬盛り上げるものだとしたら、フレンドリーさは、じわっと心に染み入るものではないだろうか。


帰りの飛行機に乗るため、泊まっていたB & Bの近くからバスに乗った。

大きな荷物を抱えている僕に対し、運転手さんが何かを尋ねた。

'Pardon?'(何ですか?)

不意の問いかけだったので、そう聞きなおすと、「どこまで行くんだい?」と言ったようだった。

「東京までだよ」と答えると、

「ほ~、そりゃぁ随分長いフライトだな」



荷物が多いので、バスの前の方で空いている席に座った。

その運転手さんは、乗車してくる一人一人に、しっかりとした挨拶をしている。

途中、高校生と思われる若者が一人、バスに乗ってきた。

例によってその運転手さんは、その若者に笑顔で「調子はどうだ?」と問い掛ける。

かったるそうな、だるさ全快のその若者は、面倒くさそうに小声で '....good' などと返す。


色々なお客さんが乗車してきて、彼のフレンドリーな挨拶に対し、人それぞれの対応を返す。

乗車している間、彼の振る舞いを何となく眺めていたけれども、彼はどんなお客さんに対しても、公平に、同じようなフレンドリーさで接していた。

彼を一言で表現するなら、「フェア」だろうと思う。

彼のような「フェア」な人間が、バスの運転をしている。

そんな事実が、この街が魅力的であり続ける原動力のような気がした。


最寄の駅に着き、バスを降りる際に'Thank you, sir'と礼を言うと、素敵な笑顔で'Have a good flight!'と返された。

旅の終わりに、彼と出会えて良かった。

Monday 19 September 2011

a modest man at a modest house




「日本人のお客さんは初めてね。どうやって見つけたの?」

「う~ん、確か'BB Canada'っていうウェブ・サイトかな」




たとえ短期間の旅行であっても、ダウンタウンに宿を取るよりも、少し離れた住宅街に泊まった方が、本当のバンクーバー・ライフを味わえる。

昔、この街に暮らしていた経験から出した結論だ。

'BB Canada'というサイトでこの宿を見つけたとき、最初に惹かれたのは、その立地に加え、値段の安さだった。

「こんなに安いということは、お化け屋敷だったりするか、はたまたオーナーが凄く嫌な奴だったりするのだろうか・・・」

都会人らしい疑いの目でウェブ・サイトのレビューを隈なく見たが、そのどれもが賞賛するものばかり。

結局、そこに3泊する予約を入れたけれども、実際に訪れるまでは、半信半疑だった。



ドアの中から出迎えてくれたのは、僕よりも若いと思われる女性オーナーだった。

彼女の優しい笑顔を見て、僕の心の中にある都会的な疑いの塊が、ようやく溶け出した。


今年オープンしたばかりというそのB & Bは、こじんまりとした、家庭的な宿だった。

オーナーが、ファーマーズ・マーケットで買ってきた食材を素に作られる朝食は、質素だけれども贅沢。



願わくば、若いにもかかわらず、一人で店を切り盛りするオーナーが、燃え尽きたりしないといいのだけれども。

そんな心配をしてしまうくらい、素敵なB & Bだった。

バンクーバーに次回訪れるときも、まだ彼女が元気で運営してますように。

http://www.casamatea.ca/

Sunday 18 September 2011

less than one dollar


高い品質のアウトドア・プロダクトをリーズナブルな価格で提供してくれるMountain Equipment Co-op (MEC)。

カナダ人の1人に1個は持っている、と言われたら信じてしまいかねない、もはや国民的ブランドである。

中でもバック・パックの種類の豊富さには、毎回驚かされる。

今回の訪問中にひときわ気になったのが、この商品。

しっかりとしたキャンバス地で作られていながら、フォルムもキュート。

そして、お値段は驚きの29ドル!(テレビ・ショッピング風)



買おうかどうか随分迷ったけれども、東京では沢山のバック・パックが僕の帰国を待ちわびているので、今回は泣く泣く断念。


「この商品のオリジナルは、1981年に25ドルで売り出されました。仮に、あなたがまだそのカバンをお持ちなら、1年1ドル以下のお値段だったということです。」

う~む、プライス・カードの下に記してある説明文も、にくいぜ!

http://www.mec.ca/Main/home.jsp

Saturday 17 September 2011

capers



バンクーバーではファーマーズ・マーケットが毎週各地で行われているほか、街中にも至るところにオーガニック・スーパーがある。

それはすなわち、農薬を沢山使って大量に食物を生産する既存のシステムを、多くの人が信じなくなってきている表れである。


オーガニック・スーパーの代表格はCapersというお店。

ダウンタウンやキツラノと呼ばれる高級住宅地なんかにあって、いつも沢山の人で賑わっている。

日本でも徐々にオーガニック・スーパーは増えてきたけれども、やはり本場は規模が違う。

店内にいると、あれもこれもと欲しくなって大変である。



今回泊まったB & Bの近くに、アメリカ資本のWhole Foods Marketというオーガニック・スーパーがあったので中を覗くと、店員さんが'Whold Foods Market' と'Capers'の両方の名前が記してあるエプロンをつけていた。

疑問に思って聞いてみると、

「何年か前に、CapersはWhole Foods Marketに買収された」

とのこと。

何だか少し寂しかったけれども、僕のようにナイーブな住民の感情を考慮してか、既存のCapersの店名は残しているとのこと。


ある日、朝食を食べにWhole Foods Marketに行くと、早朝ということもあり、さすがにガラガラだった。

のんびりした店内で、店員さん達もリラックスして働いている。


スープや野菜なんかを選んでレジに並ぶと、Tシャツに半パンを履いた20歳くらいの青年が対応していた。

店内に流れる音楽に合わせて、軽くダンスなんかをしている。

会計を済ませると、そのアンちゃんは左手の人差し指と親指を立たせ、拳銃を撃つような真似をしながら、

'Have a good day!'

と言って来た。

彼のその仕草が妙におかしくて、朝から心が和んだ。

http://www.wholefoodsmarket.com/capers/

Saturday 10 September 2011

J.J.


この旅のことをブログに載せよう。

カナダから帰ってきて、そう思い立った。

一つだけ困ったことは、僕は普段、あまり写真をバチバチ撮る人間ではないこと。

ブログのことを想定していなかったので、如何せん使える写真が少ない。

今回の写真も、ウェブ・サイトから拝借しました。




バンクーバーの市内だけれども、ダウンタウンからは少し離れた場所に、メイン・ストリートという名の通りがある。

雰囲気のあるカフェやショップ、古本屋なんかが立ち並び、街を行き交う人々も、他のエリアと比べて心なしかお洒落。

商業的には全く「メイン」ではない通りだけれども、文化的には全くもって「メイン」である。



バンクーバーのお洒落な人は、高いブランド品なんかを買う、というよりは、自分に似合う洋服を把握している人が多いような気がする。

靴がかわいかったり、鞄がクールだったり。

けれども、そんな「センス」なんかより、もっと大事なことは、「愛想」だなぁとつくづく思う。


それは、お店にも言える。

どんなに高い理想を掲げて、良い食材を使って、美味しい物をサーブされても、店員さんが無愛想なお店だと、「もう一度来よう」とは、なかなか思わない。



全てオーガニック、かつフェア・トレードのコーヒーを扱っているJ.J. Bean。

コーヒー豆の卸だけでなく、カフェも何店舗か運営している。

メイン・ストリートにあるカフェは、店の真ん中に暖炉が居座り、冬になると暖を求める客が新聞片手にコーヒーを飲んだりしている。

しかも、ここの店員さんは昔から自由な雰囲気を醸し出し、楽しそうに働いている人が多い。



やっぱ、「愛想」でしょ。

「理想」は二番目。


http://www.jjbeancoffee.com/

Jose


迎えてくれたのは、どこか東洋的な雰囲気を持つビバリーという名の女性だった。

彼女の温かい出迎えを受けた瞬間、部屋に入らずとも、そのB & Bでの滞在が心地良いものになることは、容易に想像できた。



ソルト・スプリングで作られたチーズ、ブルーベリー、卵なんかを用いて彼女が作る朝食は絶品。

さすがに、ニューヨークで菓子職人として働いていたというだけのことはある。

「朝からこんな美味しいものを食べていいのかね?」

などと考えながら、モグモグ。



ある朝、同じテーブルに座った男性と話をしていたら、アメリカのボルダーという街に住むスペインからの移民であることが分かった。

その瞬間、僕らの会話はfootballに。

「今のレアル・マドリーをどう思う?モウリーニョのサッカーはつまらない!」

マドリッド出身の彼は僕に同調を求めるが、如何せん、我が家にはテレビすらない。

「う~ん、まぁ彼のサッカーは退屈だけどさ。けどまぁ、彼はハンサムだし、華があるよね」

などと適当に会話をごまかした。


しかし、ソルト・スプリングでモウリーニョの話をするなんて、思ってもみなかった。

http://www.wisteriaguesthouse.com/index.html