Saturday 31 July 2010

contrast


仕事が一段落ついたので、久しぶりにDVDを借りて観ることにした。

一本目は、「バーン・アフター・リーディング」

コーエン兄弟×ジョージ・クルーニー×ブラッド・ピット、という豪華な組み合わせだったので、公開時から気にはなっていたのだけれども、レビューがいまいちだったこともあり、まだチェックしていなかった。

ストーリーは、ここで書くのもばかばかしいほど「しょうもない」内容なのだけれども、物語や登場人物の繋げ方は見事で、「さすがコーエン兄弟!」と唸るしかない。
そして何より、おバカなジムのトレーナーを演じるブラッド・ピットがおかしすぎてしょうがなかった。

個人的には好きですね。こんなブラピも、この映画も。

「こんなアホな映画も、たまにはいいな」と。

二本目は、うって変わってイギリスの社会派、ケン・ローチ監督の「sweet sixteen」
貧困やドラッグ、暴力の悪循環から何とか抜け出そうとするスコットランドの少年を描いた作品。

ドラッグや貧困を扱ったスコットランド映画というと、「トレインスポッティング」をすぐに思い出すのだけれども、重いテーマにも関わらずユーモアやコメディの要素を多分に取り込んだ「トレイン~」と比べると、「sweet~」は、徹底的にリアルな現実を映し出す。

何時間か前まで、ブラピのアホな台詞回しにクスクス笑っていたことも忘れるくらい、この映画はシリアスな内容であった。

二つの映画を比べると、「sweet~」が扱っているテーマは普遍的。監督が「たまたま」スコットランドを舞台にしただけで、世界のどこでも起こりうる物語である。

片や「バーン~」は、登場人物がそれぞれに悩みを抱えているのは「sweet~」と変わらないのだけれども、そのどれもが「豊かさゆえ」の悩みであり、アメリカや日本などの豊かな国でしか現実味の無い話であり、僕の中ではその対比が面白かった。

けど、もし同じ作品をもう一回観るとしたら、やっぱりコーエン兄弟ですかね。ケン・ローチ作品は重いです。
あと、スコットランド英語難しすぎ。日本語字幕を読んでも、彼らが実際に何を言っているのか、全く分かりませんでした・・・。

Sunday 25 July 2010

metric

カナダにいる頃から彼らの存在は知っていたし、CDも一枚買ったくらいなのに、何だか当時はピンとこなかった。

ボーカルのEmily Hainesが、ちょっとWinona Ryderに似ていてかわいいので、「顔を売りにしたバンドなんじゃないだろうか」なんて思っていた位だった。

最近、家で北米のラジオをつけっ放しで流していることが多いのだけれども、カナダに限らず、アメリカのラジオ局も彼らの音楽をよく流す。

カナダのインディーバンド、程度の認識であったのだけれども、どうやら人気は北米全体で根強いらしい。

そして、ついに気付きました。

ごめんなさい、私が間違っていました。

やばいです。かっこいいです。

Metricの'Sick Muse'

Here you go!

http://www.youtube.com/watch?v=BEz8N8AT-yo

Saturday 24 July 2010

this is not a 'chick-flick'


2年ほど前に日本で公開された「ジュノ」という映画は、僕にとって衝撃であった。

高校生の妊娠ものという’ありがちな’ストーリーにも関わらず、ジュノという名の主人公が放つ雰囲気と、「現代のホールデン・コールフィールド」とも称された機知に富むセリフに、僕はすっかりやられてしまった。
その主人公を演じたカナダ人俳優エレン・ペイジが主演し、ドリュー・バリモアが初監督した「ローラーガールズ・ダイアリー」を、吉祥寺のバウスシアターで観た。

ドリュー・バリモアは、言わずと知られた'ET'の天才子役であること。10代前半で深刻なドラック及びアルコール中毒になったこと。それと、いくつかの出演作を観る限り、演技が天才的にうまいこと。そんな'Wikipedia'程度の認識しかなかった。

だから、日本公開を前に新聞に掲載された彼女のインタビュー記事を読み、その聡明さと意志の強さに驚いた。

'chick-flick'という言葉が英語にはあり、主に女性向けの映画に対して使われるている。

「ローラーガールズ・ダイアリー」は、出演者がほとんど女性ということもあり、世間一般では'chick-flick'に分類されるのだろうけれども、ドリュー・バリモアは、この言葉自体に違和感を感じるのだとか。

「だって、「男のための映画」という言葉はあるの?」と。

おっしゃる通り。

ストーリーは、美人コンテストに優勝させることに躍起になっている母親に違和感を感じているアメリカの片田舎に住む女子高生が、'roller derby'と呼ばれるローラースケートの競技に出会い成長していく、というシンプルなもの。

決して美人ではないけれども、自分の意志を強く持つ主人公ブリスを演じるエレン・ペイジは、「ジュノ」に引き続くはまり役。

そして、「ギルバート・グレイプ」などで、90年代に強い印象を残した個性派俳優のジュリエット・ルイスが主人公の敵役で出ていたのだけれども、何だか懐かしくて嬉しかった。
全体としても、「傑作」とは言えないけれども、エンジョイすることが出来た。
最後に、ドリュー・バリモアのインタビューで印象に残った箇所を。
'Bliss' life in Bordeen,Texas, may seem dull and dreary to her and you, and me- but there are starving people in a lot of this world that would be real glad to switch places with her, materially. That's because everything's relative. I think that, really, the one human constant is that whatever it is you have, you want more....'

Sunday 18 July 2010

custom made

銀座の'world's bespoke'というお店でスーツを新調した。


もともと、洋服は割りと好きで、学生の頃は毎月のバイト代の多くを服代に費やしていた。


だから、大学を卒業して社会人になる時も、お金が無いにもかかわらずスーツやワイシャツをオーダーメードで何着か作ったくらいだった。


それこそ、EsquireやGQなどといった青年誌を読んで、「こんないけてる社会人になろう」なんて思っていた。


そんな生活や人間には全く興味がないことを、実際に社会人になってから、ようやく気付いた。


流行に乗った外見を目指すより、シンプルなチノパンにオックスフォードシャツでいいから、深みのある人間になろう。


そんなことを思い始めた。


幸いなことに、現在の職場は服装に関して割と融通が利くので、気ままな格好で過ごしている。


まぁ、深みのある人間になっているかは、神のみぞ知るだけれども・・・





そんな人間がスーツを新調したのは、単純にブラックスーツすら持っていなかったから。


さすがにいい歳をして、葬式にもまともな格好で行けないのはまずいなぁ、と感じていた。


サッカーをやっていたこともあるのだろうが、体型にかなり偏りがあり、既製のスーツを着ることが出来ない。


店員さんと時間を掛けて話し合い、生地や形を決めていった。


当然のことだけれども、スーツに関する知識を全くといっていいほど持ち合わせていないことに気付いた。


けれども、31歳の僕はもう焦らない。


ただ単に、それが彼らの仕事であることが分かっているから。



http://www.worldsbespoke.com/

Saturday 10 July 2010

光と闇



映画のジャンルに'Road Movie'というものがあるのだとしたら、'Railroad Movie'というジャンルがあってもいいのではないか。



「闇の列車、光の旅」という映画を観ながら、そんなことを思った。


中米のホンジュラスから、先にアメリカへと不法入国した家族を追って、列車の屋根に乗り、メキシコとアメリカの国境を目指す少女。


自分の属するギャングのリーダーを殺してしまい、復讐を恐れて同じ列車に乗るメキシコ人の若者。


彼らはいつしか、お互いに淡い恋心を抱くようになるが・・・



貧困と暴力。


「夢の国」でないことを知りながら、それでもアメリカへの移住を夢見る家族。


映画は、中南米の現実を見せ付ける。


目を背けたくなるような、「闇」のシーンがいくつも流される。


けれども、日系アメリカ人のキャリー・ジョージ・フクナガ監督は、自然の美しさや主人公の少女が見せる力強い眼差しから、映画に「光」を挿し込む。


そんな「闇」と「光」の対比を感じながら、僕は過去に観たいくつかの映画を思い出していた。



第二次大戦中、日米によるガダルカナルにおける戦いを描いたテレンス・マリック監督の「シン・レッド・ライン」


大学を優秀な成績で卒業しながらも、物質社会を否定し、一人アラスカの「荒野へ」向かい生き延びようとする青年を描いたショーン・ペン監督の「イントゥ・ザ・ワイルド」


そして、フライ・フィッシングという共通の趣味で結ばれた家族の物語、ロバート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」



これらの作品に共通しているのは、人間の複雑さと、自然の美しさを対比させていることだろうか。


「光」と「闇」。


「闇の列車、光の旅」は、90分余りの短い物語だけれども、心を強く揺さぶられた。


「あぁ~、自分はこういう映画が本当に好きなのだなぁ」


と改めて思った。



日比谷の映画館を出て、丸の内を通って東京駅へと向かったのだけれでも、途中、綺麗に着飾った女性がたくさんいて、一気に東京という現実に戻された。


けれども、僕の脳裏には、主人公の少女が放つ深い眼差しが強く残る。


既存の価値観や概念に疑問を呈する。


そんなパワーが、この映画には秘められている気がした。

http://www.yami-hikari.com/

Sunday 4 July 2010

Auster

Paul Auster の新刊 'invisible' を読んでいる。

日本では人気の高い彼だけれども、北米ではそれほど有名ではないらしい。

はっきりとした理由は分からないのだけれども、翻訳を手掛けている柴田元幸さんの力も多分にあるのだろうなぁ、と思う。

たしかに彼の翻訳は良いけれども、オースター自身の文章も、物凄く綺麗で、読むたびに感動する。

ただ、彼の作品は長編が多いうえに、村上春樹の作品とも比較されるように、少し不思議な世界に読者を連れ出すことが多く、原書で読んでいても、100ページあたりで疲れて投げ出してしまったことは一度や二度ではない(本当に)。

その点、この'invisible'は彼の作品には珍しく’ボーイ・ミーツ・ガール’の様相を呈している(いまのところ)ので、「い~ぞ~オースター、このまま突っ走ってくれ」と願いながら読んでいる。

ちなみに、彼の作品にあまり馴染みが無い方には、映画「スモーク」がお勧めです。

自身の珍しい短編小説を基にオースターが脚本を書き、ウェイン・ワンが監督したこの映画は、ハーヴェイ・カイテルが渋い演技を見せてくれていて、僕のお気に入りの一本。

それと、'The Red Notebook'(「トゥルー・ストーリーズ」)という題のノン・フィクション。

オースターと、彼の周辺の人たちの間で起こった摩訶不思議な出来事を綴った短編集で、この本には人生のエッセンスが詰まっているような気がする。