Saturday 29 October 2011

red by red


東京で生活していて、「あぁ、いい景色だなぁ」と感じることは多くない。

それは疑いようのない事実であると同時に、都市で生活する上で知らずしらずのうちに身に着けている「意識の遮断」が、追い討ちを掛けていることも、また確かである。

それでも、良く晴れた秋の日に、国立競技場のバックスタンドから望む新宿のビル群は、悪くない光景だと思う。



「1万席限定」の抽選方式で運よく購入できた「ヤマザキナビスコカップ決勝 浦和×鹿島」。

送られてきたチケットは、運悪くバックスタンドとは正反対のメインスタンドだった。

新宿のビル群が見えない代わりに、僕の目の前に広がるのは、赤、赤、赤。

両チームとも赤色がチームカラーであることから、この2チームが対戦するときは、スタジアムがいつも真っ赤に燃え上がる。



試合の中身は、両チームともミスが目立ち、語るに値しないゲームであった。

ただ、「監督の采配」が色濃く試合結果に影響を及ぼした点は、興味深かった。

後半開始早々に山田直輝という攻撃的な選手が退場になったレッズは、前線にFWのエスクデロを残し、守りをガッチリ固める戦いを余儀なくされていた。

それに対し、アントラーズのオリヴェイラ監督は、

遠藤(MF)⇒田代(FW)

アレックス(DF)⇒フェリペ(MF)

と続けざまに交代を行う。


「さぁ、点を取りに行こう」


それは、監督からの明確なメッセージだった。

布陣は、4-3-3。



攻撃的MFのフェリペを左サイドバックに配置してしまうほどの攻撃的な布陣。

ところが、後半修了間際に、センターバックの青木が退場になってしまう。

これだけ攻撃的な布陣を取っていながら、センターバックを欠いてしまったら、世界中のサッカー監督の多くは頭を抱えるだろう。そして、貴重な最後の交代枠は、FWに変えてDFという、あまり乗り気のしないものになってしまう筈だ。

オリヴェイラ監督が出した結論は、こうだった。

小笠原(MF)⇒増田(MF)

「う~む、そうきたか・・・」

メインスタンドの最前列に座る僕はうめいた。


FWを減らす代わりに、攻撃的センスの光る柴崎をサイドバックに据え、サイドバックを努めていた新井場がセンターへ移動。

1人減った中盤は運動量が要求されることから、ベテランの小笠原に変えて、働き盛りの増田を投入。

驚きだったのはDF陣。

フェリペ(攻撃的MF)、中田(守備的MF)、新井場(サイドバック)、柴崎(守備的MF)

4バックの誰しもが、本来の専門職ではないポジションを、何事も無かったかのようにこなしていた。(まぁ、この4バックを崩せないレッズの攻撃陣も不甲斐ないとは思うが・・・)

そして、延長前半の大迫の決勝ゴール。

決勝戦のMVPは、いつもの如く得点者の大迫が選ばれた。

けれども、僕には急造のディフェンス・ラインを涼しい顔をして統率した中田浩二が、この日のMVPに最も相応しい人物のように思えた。



ハーフタイム、大好きなカメラマンの近藤篤さんがスタジアムの中を歩いていたので、「近藤さん!」と最前列から声を掛けたが、歓声にかき消された。

彼は長年、レッズの写真を撮り続けている。

試合終了後、優勝の歓喜に沸くアントラーズの面々を横目に見ながら、カメラ機材を抱えて帰路に着く近藤さんは、心なしかグッタリしているように思えた。

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