Sunday 2 October 2011

Come on, son. Hit me!



大学2年生の頃、とあるシネマ・コンプレックスのアルバイト採用面接を受けた。

何故そこで働きたいと思ったのか、今となっては理由を全く思い出せない。

思い出せないけれども、そのシネコンの社員と思われるおじさん数名と会話した記憶はある。

数日後、封筒が送られてきて、中には「今回はご縁が無かった」なんて類の通知文と、そのシネコンのフリーチケットが1枚同封されていた。

その時期、特段見たい映画は無かったのだけれども、ガダルカナルにおける日米の戦いを描いた「シン・レッド・ライン」と題するアメリカ映画を、何気なく選んだ。




後で知ることになるのだけれども、監督のテレンス・マリックは1970年代に「地獄の逃避行」「天国の日々」という2作品を発表し、共に大絶賛されながらも、その後20年間、映画を1本も作らなかった、まさに「生ける伝説」のような人物であった。

事前情報を何も得ずに見た「シン・レッド・ライン」は、とにかく上映時間が長く、「まだ終わんないのかなぁ」などと何度も思いながら見ていた。

映画の内容は正直、良く分からなかったのだけれども、映画館の外に出て、この映画のことを振り返ってみると、何か心に引っ掛かるものがあった。

後日、レンタル・ビデオ屋で彼の前2作品を見てみた。

言葉ではうまく表現出来ないが、彼の作品は僕の心を揺さぶった。

いつからか、僕は彼の「信者」となっていた。



ポカホンタスという名のネイティブ・アメリカンと、イギリスの冒険家との間の悲恋を描いた「ニュー・ワールド」に引き続き、監督5作品目「ツリー・オブ・ライフ」で彼が描いたのは、1950年代におけるアメリカの1つの家族の物語であった。

主演はブラッド・ピットとショーン・ペン。

昨年のカンヌ映画際では、最高賞のパルムドール。

信者としては、期待が嫌が応にも高まった。



最高潮に高まった期待は、映画館でくじかれた。

「シン・レッド・ライン」を初めて見たときに感じた、「まだ終わんないかなぁ」という感情以上の物が、僕の心を渦巻いていた。

「何なんだ、この映画は。遂に血迷ったか・・・」

感想を一言で言うならば、「意味が分からない」であった。



信者として、このまま終わるわけにはいかない。

後日、再度映画館に足を運んだ。

何故、「意味が分からない」のか、意味が分かった。

「ツリー・オブ・ライフ」は、極めてユニークな作品だった。

僕らが無意識に求めてしまう、ストーリーの「起承転結」なんていうものは、完全に放り去られていた。

一般的な家族の、ごくありふれた「日常」を描いただけでありながら、家族や生命の繋がりを意識させる「非日常」的な芸術作品であった。


しかし、「ベンジャミン・バトン」で「これでもか」という美男子を演じてみせたブラッド・ピットが、「ツリー・オブ・ライフ」で見せた厳格な父親役とのギャップは、まさしく驚嘆。

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