映画のジャンルに'Road Movie'というものがあるのだとしたら、'Railroad Movie'というジャンルがあってもいいのではないか。
「闇の列車、光の旅」という映画を観ながら、そんなことを思った。
中米のホンジュラスから、先にアメリカへと不法入国した家族を追って、列車の屋根に乗り、メキシコとアメリカの国境を目指す少女。
自分の属するギャングのリーダーを殺してしまい、復讐を恐れて同じ列車に乗るメキシコ人の若者。
彼らはいつしか、お互いに淡い恋心を抱くようになるが・・・
貧困と暴力。
「夢の国」でないことを知りながら、それでもアメリカへの移住を夢見る家族。
映画は、中南米の現実を見せ付ける。
目を背けたくなるような、「闇」のシーンがいくつも流される。
けれども、日系アメリカ人のキャリー・ジョージ・フクナガ監督は、自然の美しさや主人公の少女が見せる力強い眼差しから、映画に「光」を挿し込む。
そんな「闇」と「光」の対比を感じながら、僕は過去に観たいくつかの映画を思い出していた。
第二次大戦中、日米によるガダルカナルにおける戦いを描いたテレンス・マリック監督の「シン・レッド・ライン」
大学を優秀な成績で卒業しながらも、物質社会を否定し、一人アラスカの「荒野へ」向かい生き延びようとする青年を描いたショーン・ペン監督の「イントゥ・ザ・ワイルド」
そして、フライ・フィッシングという共通の趣味で結ばれた家族の物語、ロバート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」
これらの作品に共通しているのは、人間の複雑さと、自然の美しさを対比させていることだろうか。
「光」と「闇」。
「闇の列車、光の旅」は、90分余りの短い物語だけれども、心を強く揺さぶられた。
「あぁ~、自分はこういう映画が本当に好きなのだなぁ」
と改めて思った。
日比谷の映画館を出て、丸の内を通って東京駅へと向かったのだけれでも、途中、綺麗に着飾った女性がたくさんいて、一気に東京という現実に戻された。
けれども、僕の脳裏には、主人公の少女が放つ深い眼差しが強く残る。
既存の価値観や概念に疑問を呈する。
そんなパワーが、この映画には秘められている気がした。
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