@Sydney (Australia)
アデレードの居心地があまりに良かったので、シドニーという大都市になかなか馴染めずにいた。
見知らぬ人に道を聞けば優しく教えてくれるし、店で不快な思いをすることもないのだけれども。
人の多さと、雑多な街がどうしても肌に合わなかった。
そんな時、こちらで知り合ったオージーの友達に、
「絶対気に入ると思うから」
と言われ、Newtownという名の郊外の街に連れて行かれた。
駅を出た瞬間、すぐに分かった。
「あぁこれですよ、僕が求めていたものは」
彼にそう伝えた。
東京でいうならば、下北沢や高円寺のような雰囲気。
古着屋やカフェ、パブなどのお店が立ち並ぶ。
物で溢れかえっている東京のお店と比べると、質や種類は比べようもないくらい
「大したことがない」お店ばかりなのだけれども。
街を歩く人は皆、自分のスタイルを持っている人ばかりで。
お店に入ると、ナイスな笑顔をくれる店員がたくさんいて。
いまの僕にとって大事なことは、商品よりも街で生活する人なんだ、ということに
改めて気付かされる。
その日、僕はこの夏に東京で買ったエスニック調のニットと、裾をちょん切った
アーミーパンツを着ていた。
「なんか、完全にこの街の住人だよね。」
パブの屋上テラスでローカル・ビールを飲みながら、オージーの友達が言うその
セリフを、僕は笑いながら聞いていた。
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